DJ Seby
DJ SEBYが様々な機材でスクラッチをする”Multiscratch”動画をDJcityTVにて公開
今回のDJcityTVは、イタリアのシチリア島で活躍するターンテーブリストDJ SEBYの登場です。
様々な機材のセットアップで卓越したスクラッチを披露してくれています。
< ルーティン解説 >
「ルーティン解説」と言いつつも機材の紹介になりそうな今回の動画。
最初に登場するのはNumark DJX × Rane TTM56の組み合わせ。2004年に発売されたNumark DJXはCDとMP3等の音楽ファイルを12inchのターンテーブルで操作が可能。その年はTechnicsもターテンテーブル仕様のCDJ”SL-DZ1200“を発売した年で、それまでターンテーブル一辺倒だったHipHop DJがCDJを意識しだした時期です。見た目も昨今話題になっているアーム不要のターンテーブル式コントローラー(PhaseやRane Twelve)を予見していたかのようなデザインですね。DJミキサーはRane TTM56というデジタルミキサーでSERATOでお馴染みのRane社が2004年に発売したデジタルミキサーです。特徴としては内蔵エフェクターが装備されているのと、縦フェーダーの距離が短いのでバトルDJ向けのミキサーと言えるでしょう。フーレズ「What’s that cool」を使ったスクラッチの切れ味を見てもそれが伺えます。
次に登場するのはReloop Spin × Vestax PMC-07Pro ISP Modelです。Reloop Spinは2018年に発売されたポータブルターンテーブルで携帯端末やPC機器とのBluetooth接続が可能となっており、ビートとスクラッチ音を同時に内蔵スピーカーから鳴らせるようになりました。また、USBメモリースティックを直挿ししてLINE録音も可能になったので周囲の音を気にする事無く綺麗に録音が出来ます。DJミキサーは2014年に倒産したVestax社が製造したバトルDJ用のミキサーで、SEBYが使っている機種はスクラッチの神様といわれるDJ Q-BERT率いるターンテーブリスト集団Invisible Skratch Piklz(ISP)のシグネチャーモデルです。パネル左中央部に見えるヘッドシェルを模した虫のようなマークがISPのロゴです。とっくに廃番している機種なのでマニアの間では欲しい一品かもしれません。定番フレーズ「Ahhh」を使ったフェーダーの切れ味も抜群です。クロスフェーダー付近の塗装が剥げているのも練習量の証なので当時はヤスリで擦ったりして塗装を剥がしていました(笑)。
3番目のセットアップは、Vestax PDX-2000mk2 Pro × DENON DN-1500S。ターンテーブルは20004年発売のVestax PDX-2000mk2 Proはトーンアームがストレートになっているのが特徴。これは針飛びのしにくい構造(A.S.T.S)として施されておりハードなスクラッチや2枚使いに対応した設計。また通常のピッチコントローラー(可変幅±10)に加えウルトラピッチフェーダーというものがついており、その可変幅は驚愕の±50。おそらく楽曲制作時のソウルなどの早回しサンプリング(Kanye WestのThroug The Fireとか)等で役立ったはずです。 DJミキサーの方は2006年発売のDENON DN-1500Sで調べた所によるとかなりの優れもの。内蔵エフェクターにサンプリング機能、USB出力などなど当時のデジタルミキサーで考えると機能が盛り沢山です。スクラッチの切れ味をみても全く問題無さそうです。
4番目に登場するのはNative Instruments TRAKTOR Kontrol S4。見ての通りオールインワンタイプのDJコントローラーで、DVSソフトのTRAKTOR専用機種になります。発売された2010年といえばSERATOやTRAKTOR等のDVSソフトを使うDJが増え始めた年ですね。同時にこの手のコントローラーも各メーカーから色々リリースされていました。持ち運びが可能なので家と同じセットでDJできるというメリットがあり、DJ人口増加の後押しになったのではないかと思います。スクラッチに関して言えばジョグホイールのタッチ面積が狭いぶん難しそうですね。クロスフェーダーはキレキレなので問題無さそうです。
5番目はTechnics SL-1200 mk3 × Vestax PMC-07Pro ISP Model。いよいよターンテーブルの本命が登場。日本が生んだ名器ともいえるSL-1200は、1979年に現在もクラブ等で使われているSL-1200シリーズの原型とされるモデルSL-1200 Mk2が発売されて以降、世界中のDJに愛され続けカルチャーの発展を共に歩んできました。個人的には未だにTechnics SL-1200を超える安心感と操作性を持つターンテーブルは存在しない気がします。私も15年以上使っていますが1度も壊れた事が無く今日も元気に回転しています。その歴史を紹介したドキュメンタリー映像 「世界を変えた日本の音楽テクノロジー」が昨年RedBull Musicから公開されているので是非チェックしてみて下さい。
ラストはPioneer CDJ-2000 × DENON DN-1500S。Technicsがターンテーブルの本命なら、CDJの本命はPioneerDJといえるでしょう。そもそも「CDJ」という言葉はPioneerDJの製品名ですが、一般ではDJ用CDプレーヤー全般をCDJと呼んでいますよね。それぐらい世界中で使われている機種なのです。多才な機能と高い操作性を備えているのでDJ YAMATO並みに使いこなせばそれだけでオリジナリティのあるDJ Playが可能だと思います。
いかがでしたでしょうか。ポータブルタンテ、CDJ、コントローラー、それぞれの機材に合ったスクラッチの技があると思うので、それを見極めて安定したスキルを見せてくれたDJ SEBYに拍手です。また、これを機にメーカーや機材の歴史に触れてみると面白いかもしれません。日本の機材メーカーが世界の音楽シーンの発展に大きく貢献した事実を知る事になると思います。
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