横浜DeNAベイスターズのSound DJをつとめるDJ RAM

湘南出身で横浜と東京でマルチジャンルをプレイするDJとして活動するDJ RAM。今シーズン惜しくも優勝は逃したものの大健闘した横浜DeNAベイスターズのホームスタジアムでSound DJとしてつとめている彼が、その役割や重要性を語ってくれました。

DJcity : ベイスターズのスタジアムでDJをやっているけど、具体的にどういうポジションで仕事をしてるんですか?

DJ RAM : 横浜DeNAベイスターズのスタジアムSound DJっていうポジションですね。

DJcity : どんな経緯で横浜DeNAベイスターズのSound DJになったんですか?

DJ RAM : もともと僕の先輩がこの仕事に関係していて、その紹介で最初に関わり始めて。始めは補佐という形で1年間やって、2年目からは引き継ぎみたいな形で、僕一人でやるようになって、今に至る感じですね。

DJcity : Sound DJって具体的にどんな仕事内容なんですか?

DJ RAM : 簡単に言ってしまうと、全体のサウンドプロデュースですね。と言うのも、スタジアムで流れる全ての音楽を現場リーダーと僕できめているんで。横浜DeNAベイスターズの球場では、全部DJが音楽を出しているんですよ。試合の2時間前くらいに開場して始まるんですけど、まずそこから音楽をスタートさせますね。それと、選手の登場曲とか、試合中のメンバー交代とか、演出の部分とかも含めて、球団との話し合いで決めているんで。横浜DeNAベイスターズが試合に勝った場合は、試合終了後に花火を上げるんで、1分から1分半の尺で、事前に僕が選んだ曲を渡しておいて、照明さんや花火の担当者と擦り合わせをして盛り上げたりしてます。とにかく、球場の音楽に関することは全て担当しているという感じですね。

DJcity : それって使っているのはターンテーブルとかCDJなんかのDJ機材ですか?選手入場曲とか、野球ならではの演出とか、専用の機材が球場にあるんですか?

DJ RAM : 僕は全部ターンテーブルっていうか、SeratoのCDJのセットで全部やってますよ。選手の登場曲も含めてDJのセットで音楽を流してますね。

DJcity : ナイトクラブのDJとは色んな意味で違ってくると思うけど、野球場でDJをする1番の面白さって何ですか?

DJ RAM : まず、横浜DeNAベイスターズが凄く人気があるチームで、12球団の中で最もチケットが手に入りにくい状況なんですが、平日にファンが3万人に入るんですよ。試合直前の盛り上げタイムは、ガンガンDJをやるんで、ナイトクラブとは完全にキャパが違うところが面白いですね。音楽のジャンルに関しても、横浜DeNAベイスターズにお話をもらった当時から「洋楽にしなさい」って言われていて、球場の全体イメージを洋楽でという指示で。他の球場にも勉強のために視察に行ったんですけど、やっぱり他の日本の球場は、邦楽Popが流れることが多いですよね。勿論、選手の登場曲で、その選手から邦楽Popを指定された場合は邦楽をかけますけど、演出だったり、DJプレイっていう部分では、横浜DeNAベイスターズは全部洋楽なんですよ。Rockだったり、Hip Hopだったり。最近、横浜DeNAベイスターズの選手が気に入ってるのはLatinですね。

DJcity : どうして横浜DeNAベイスターズは洋楽中心の方針になったんですか?

DJ RAM : 球団として、とにかく、お客さんに楽しんでもらおうというコンセプトが根底にあるんです。単純に野球の試合を観に行くのではなくて、ボールパークを楽しんでもらうということですね。野球を観るだけじゃなくて、遊びに来る感覚の、エンターテインメントの会場にしようというアイデアがベースにあって。そのコンセプトの中で、音楽も当然エンターテインメントの一部なんで、DJに任せようという話が上がったみたいで。演出に関しても、例えば音楽と花火は、毎回一緒に盛大に上げようとか、DeNAが一気に球団の方針を変えたタイミングで、丁度良くDJのポジションが僕にまわってきた感じですね。お客さんを楽しませるっていう、当たり前のアイデアですけど、実際に5000人しか来ていなかったスタジアムが、今は3万人の来場ですからね。凄いことだと思います。

DJcity : そのポジティブな結果に、少なからずDJ RAM効果が出ているってことだね。

DJ RAM : そうですね(笑)。

DJcity : ところで、さっき言っていたLatinがお気に入りっていう話ですが、どうしてLatinなの?

DJ RAM : 流行っているっていうのもありますけど、単純に選手がLatinミュージックを好きなんですよ。そっち系出身の選手も多いですからね。

DJcity : 選手の入場曲って選手から指定されるものなの?それとも相談されたりもする?

DJ RAM : それは選手によりますね。DJに任せるって言ってくれる選手もいますし。白崎選手は僕のところに来て「なんかいい曲ないですかね?」みたいな相談もくれましたし。「みんなが歌える曲がいいと思うんだけど、何かそういうのでないですか?」っていう要望を聞いて、僕が曲を決めました。

DJcity : 「どんな音楽?」っていう部分に対して、まず、音楽自体をプレゼンするところから始まると思うけど、どうやって選手や関係者に音楽を聴いてもらっているんですか?

DJ RAM : ミックスを作って、それを渡したりしてますね。それと、開場前の時間帯があるんですけど、選手がグラウンドで練習している時間なんですね。そこは僕が作ったミックスを流してますね。それを聴いた選手が「今日のミックスの、あの曲なんていうの?」みたいに聞いてくるパターンが結構多いですかね。他にも色々と試行錯誤があって、例えば、横浜DeNAベイスターズのクローザーの山崎選手は、Zombie Nationの曲を使っているんですけど、イントロが長いんで、イントロ部分をカットしたエディットバージョンを使ったりしてますし。山崎選手の「康晃ジャンプ」って球界で有名なんですけど、あそこの曲もエディットしてあって、あるタイミングで全員が一斉に歌い出して盛り上がれる、そういう工夫とか、編集は結構入れてあります。

DJcity : DJ RAM発信の音楽的な提案が通ることもあるんですか?

DJ RAM : ありますね。結構大きな提案だと、横浜DeNAベイスターズの年間を通したテーマ曲っていうのがあるんですね。球団の方から「誰かアーティストを紹介して欲しい」と頼まれて、どういうアーティストを探しているのかヒアリングして。それまでの感じでいくと、日本の有名Popアーティストに依頼をするという流れになると思うんですけど、僕的には横浜って港町じゃないですか?そういう背景もあってHip Hop文化が根付いてきた経緯もあるんで「Hip Hopのアーティストにしましょう」っていう話になって、OZROZAURUSに曲を依頼する流れになりました。企画提案から、アーティストへの依頼まで、全部自分でやりました。依頼をした後も、どんな曲にするのかと言う打ち合わせもあって、完成したのが今年の初めだったんですけど、自分が横浜DeNAベイスターズに提案をして、しっかり形に出来た案件ですね。12球団の年間テーマ曲にHip Hopアーティストが起用されたのは初めてですし、スタジアムで生ライブもやってもらいました。

DJcity : DJというキャラクターや才能がしっかり活かされた音楽演出ですね。

DJ RAM : そうですね。これからもっと、こういう仕事が一般的に広がっていったらいいなと思います。アメリカだと、プロスポーツチームにはDJがいて、DJが音楽全体の演出をプロデュースしていくのが普通だと思うんですよ。音響さんじゃなくて、DJがするっていう。そこに日本で一番最初に目をつけたのが、横浜DeNAベイスターズで、たまたま僕にオファーをしてくれたという話ですけど、横浜DeNAベイスターズに限らず、どの球団にも、どんなスポーツチームにも、DJや音楽を含めたエンターテインメントが浸透してくれればいいなと思います。

DJcity : 今回は残念ながら、横浜DeNAベイスターズはファイナルで優勝を逃してしまいましたが、優勝を想定した演出の話し合いはあったんですか?

DJ RAM : 細かな曲までは決めていませんでしたけど、準備をしなければという話は出ていました。

DJcity : 優勝パーティーの絵で、DJがいるのはあまり見たことありませんが、横浜DeNAベイスターズだったらありえますよね?

DJ RAM : そうですね、それはあったかもしれないですね。でも、今後パーティーがあるんですよ。横浜DeNAベイスターズのファンクラブ限定なんですけど、200~300人規模のホテルでのパーティー会場で、1年間応援ありがとうございましたという挨拶も含め、選手との交流をする場なんですが、そこの会場では僕がDJをやりますよ。

DJcity : DJの仕事を通して、選手とも仲良くなったりしますか?

DJ RAM : 横浜でDJをする時には、選手がクラブに遊びに来てくれることはありますね。でも、プロ野球選手なんで、スケジュールもハードですから、東京の現場でDJってなると、遊びに来てもらうことは難しいですけど。横浜DeNAベイスターズは選手がみんな若いんですよ。平均年齢も25-26前後で。やっぱり、みんな音楽が好きですよね。それに海外から来ている選手は、ナイトクラブよりの選曲を好みますよね。凄く嬉しかったことが1つあって、試合前の時間帯でDJをする時に、Hip-Hop、Rock、Reggaeとかを中心にかけるんですけど、相手チームの選手が「ここの音楽は誰が担当してるの?」って球団を通して聞いてきたんですよ。最近だとヤクルトのValentine選手とか「ここのスタジアムDJが入ってるよね?ライブミックスだよね?DJ誰なの?」っていう感じで、僕がやっていることが、内情を知らない相手球団の選手にも伝わっているのが嬉しかったですね。「来年はヤクルトに来てくれ!」って言ってくれて(笑)。本当にみんな音楽が好きなんだなって感じましたね。

DJcity : ナイトクラブのDJと違って、チャレンジだと感じるところはありますか?

DJ RAM : 球場に限らず、ナイトクラブにも言えることですけど、やっぱり選曲をあまり突っ込めないっていうところですかね。演出の音楽に関しては、一般的なお客さんが理解出来る洋楽を中心にしてますけど、DJプレイの際には、ある程度、僕が好きな選曲で、自分の色を出してはいますけどね。

DJcity : 試合前の、選手の練習時間はどんな感じの選曲なんですか?

DJ RAM : 試合前の練習時間はLatinの曲を使ってます。ホームゲームの時は毎回決まったLatinoの2曲を使っていて、ルーティンのウォーミングアップがあるんですけど、みんな踊りながら、2曲で6分間くらい、踊りながらウォーミングアップするんです。ロープを引いて、その曲にパッと切り替えると、選手はそれを聴いて次の動きに移る感じですね。最初、トレーナーから「毎試合ウォーミングアップの時間には、同じ曲で、全員踊りながらウォームアップするようにしたい。楽しい空気感を作りたい。」って相談されて。毎回、試合前にやっているので、お客さんにも浸透してきてますよね。結構キャッチーな曲なんですけど、それでも日本のプロ野球チームが、毎回必ずこの決まった2曲をウォーミングアップルーティンに使うっていうのは、他の球団ではないと思いますね。

ウォーミングアップ曲
Charly Black & Luis Fonsi – Gyal You a Party Animal (Remix)
Marc Anthony – Vivir Mi Vida (Versión Pop)

DJcity : 選曲のアップデートの頻度ってどのくらいなんですか?

DJ RAM : 今期だと、日本シリーズに入った際に変更しようという話になりましたね。日本シリーズではRock調の「これから戦うんだ」みたいな雰囲気の曲にしました。それまでは踊れるとか、ハッピーな曲が多かったんですけど、球団のスローガンも「This is my era」から「Our time is now」に変えて、それに合わせて球場の雰囲気も変えていこうという話をして、Rockの強い感じを中心にアップデートしましたね。

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