西麻布a-lifeのレジデントDJ/ミュージックプロデューサーDJ Braizeがクラブプロデュースを語る

六本木/西麻布にあるa-lifeにてレジデントDJそしてミュージックプロデュースを担うDJ BraizeがDJcity Japanのインタビューにて、ナイトクラブにおけるミュージックプロデュースをDJとしての観点で語ってくれました。

DJcity : a-lifeのレジデントDJという立場で活動しているけど、実際の立ち位置っていうか、どんな契約で動いているんですか?

DJ Braize : 特にこれといった契約は無いんですけど、DJを含め、音楽的な側面の総括をするポジションですね。音楽の方向性だったり、DJのプレイする時間帯を決めたり。それと、このプロジェクトが始まった当初からチームとして動いていくと決めたんで、基本的には僕の独断で何かを勝手に決めるようなことは無いです。必ずみんなと相談しつつという感じですね。

DJcity : チームにはどんなメンバーがいるんですか?

DJ Braize : 僕と、Seiro、George、Ryohey、あとBrunoですね。

DJcity : 色々と相談をして決めていくという話だったけど、具体的にどんな内容の相談があるの?例えば音楽の話だと、どんな話ですか?

DJ Braize : 立ち上げた当初は、かなり頻繁に意見交換はしていましたね。今後、どんなクラブになっていくのか?他との差別化をしっかり図るために、音楽性の部分でも話し合いましたけど、そこで決めたことを各DJに押し付けるっていうことじゃなくて、そういう考えに至ったプロセスをみんなで共有するというか、「感覚」を共有していく感じですね。「この音楽をかけなければダメ」みたいな、そういうことはDJとして言いたくなかったので、これまでもそういう話をしたことはないですね。

DJcity : 「感覚の共有」というのは、具体的にどんな流れの中で生まれるものなんですか?

DJ Braize : そもそもの話になりますけど、集めたメンバーに関しては、音楽的な部分から、その他の多くの事までを共有出来る人材という判断で集めた前提があるんで、そんなに難しい話をしなくても、肌で感じてくれるというか、いちいち細かい事を確認しなくちゃ上手くいかないようなメンバーじゃないんで。そういう共有していくプロセスは、僕にとって大事な部分なので、人選の段階から考えてましたね。

DJcity : a-life が目指すナイトクラブの方向性とはどんなものですか?

DJ Braize : 大まかに言うと、ラスベガスみたいな、まず自分も含め、ラスベガスとかのナイトクラブがやっているOpenformatが結構好きで、しかも、それが日本のマーケットにもマッチするっていうのはわかっていたんで、ちょっと前まではそういう方向性を体現しているナイトクラブは無かったですし。色々な国の人が遊びに来て、勿論、日本人もいるけど、東京には色んな人が集まっている、お金持ちも、普通の人も、一杯だけ飲みたい人も、ゴチャゴチャにさせたかったっていうのはありますかね。偏らせたくなかったんですよ。日本人だけとか、外国人だけ、お金持ちだけ、そういう偏った色を付けずに、とにかくゴチャゴチャしていて、いつも楽しそうっていうイメージですね。

DJcity : なるほど、ラスベガスのナイトクラブというと、テーブルボトルサービスの料金の部分が話題になりがちで、お金持ちがどれだけ一晩でお金を使っているかという例が挙がることが多いですけど、それだけがラスベガスのナイトクラブの全てではないですからね。観光地なので、本当に色々な人が楽しんでいるのが実情ですからね。

DJ Braize : そうなんですよ。勿論、そういうボトルサービスがメインになるナイトクラブもありますけど、客層をよく見ると、めちゃくちゃ観光客がいるんですよ実際のところ。単純にホテルに泊まっていて、ちょっとだけナイトアウトしようかな?みたいな観光客の人が一杯いるじゃないですか。テーブルの売り上げだけで1000万円以上っていう話も聞いてはいましたけど、僕らみたいな普通の観光客が、3~4杯飲んで、いい感じに酔っ払って、踊って帰るみたいなケースも多いわけで、そういう混沌としたところが面白い部分だと思うんです。1000万円使って遊ぶお客さんと、1万円使って遊ぶお客さんが同じ場所にいるっていうのが、そこに大きな魅力を感じました。だから、偏らせたくなかったんですよ。純粋に楽しみに来ている色んなお客さんに受ける音楽を提供するのが、僕達チームの役割ですよね。

DJcity : a-life がオープンして1年半が経ちましたが、目標に向かって進む中で、これまで一番チャレンジなことは何でしたか?

DJ Braize : まず、単純にスタートした当初はお客さんがいなかったです。どうしても客の入りが良くないと、音楽にも口を出されるっていう(笑)。スタッフにもそれとなく「もっとEDMかけた方がいいんじゃない?」とか、ちょこちょこと言われましたね。それでも救われたのは、スタッフがみんな良い人なんで「絶対に音楽を変えた方がいい」とまで言われることは無かったです。「お客さんがもっとEDMを聴きたいって言ってるよ」とか「ジャンルが全然違う曲を望んでるよ」とか、お客さんの反応に関してはコメントをくれて。でも、今やっていることは必ず上手くいくっていうのはわかっていたんで、そこに関しては譲れないというか、死守しましたね(笑)。あそこで方向転換すると、一瞬お客さんが入るようになっても、長い目で見たときに行き詰まるのがわかっていたんで。僕らがやっていることがマーケットに求められる時期が必ずやってくるっていうのはありました。

DJcity : チーム内で、状況に左右されて、ブレてしまう瞬間は無かったんですか?

DJ Braize : そこに関しては全然ブレなかったですね。完璧に全員が同じ選曲をするわけじゃないですけど、目指している先は一緒だったんで。同じ船を漕いでるんです。それでもみんなに個性はあるわけで、個性まで同一にしちゃおうって言うのは、それは違いますよね。

DJcity : メンバー間でプレイリストについての意見交換はするんですか?

DJ Braize : することはありますけど、僕が結構こだわっているのは、その人の個性を大切にしたいっていうのがありますね。DJって、どこか自分の心地良い感覚、好きな方向性に揃えて近づけたがるものだと思うんですよ。でも、僕は人と自分が違う事を大切にしたいんで。勿論、自分の中では「これはあんまりカッコ良くないな」とか、そういう感覚はありますけど「カッコ良くない」って思えることも大事なんで。これに関しては自分で音楽を作るようになってから考えるようになったんですけど、全部を揃えて一緒にしちゃうと、最終的に平坦なものになっちゃうんですよね。それこそ一番つまらない状態ですよね。それに、客観性を持って見ることも大事で、否定する考えが自分の中にあっても、まずはそれを聞き入れてみる。そこから何かを理解する。音楽を作るようになって、そういう物事の考え方がようやくわかって、それは、個性の大切さだったり、自分と違う事を理解するっていうことですよね。それをDJでも実行していきたいっていうのがありますね。

DJcity : オープンから1年半が経過して、毎週、長蛇の列が出来るナイトクラブになった現在ですが、今後も状況は変わっていくのだと思いますが、ここから先の展開はどういうことを考えていますか?

DJ Braize : 1つ言えるのは、僕らがBillboardチャートをいじることは出来ないんで、それはつまり、お客さんが聴きたい曲を変えることは難しいということですよね。「これがいいから、これを聴け!」っていうスタイルは難しいと思うんですよ。欧米の外国人はBillboardチャートにランクインしている曲を聴いている人もいるし、アジア圏のお客さんはEDMをメインに聴いている人もいる。それらの好みを変えることは難しい。だから、音楽の部分は、現状のスタイルからそこまで変えることはせず、エンターテインメントの部分を切り替えていくことに集中したいなと。本当はもっと早い段階でそこに着手したかったんですけどね。今ようやく、そこの部分を考えています。

DJcity : エンターテインメント?

DJ Braize : 今までやってきたことは、音楽があって、お酒があって、ホスピタリティーがある。それらの質を強化していくのは当たり前のことなんですけど、ここ5年、10年先は、そこに対してのアプローチにもうひと工夫が必要だと。単にダンサーを入れるとか、そういう話でも「ダンサーをどんな感じで入れるの?」という具合に、もっと細かい部分に入っていく。CO2のガスもそうですよね。一昔前には存在しないものですし、特効(特殊効果)なんて無かったですし。10年以上前に海外に行った時に、シャンパンボトルに花火を付けていたのが衝撃で。今だとそんなのどこのクラブでも当たり前の風景ですけど、当時、日本のナイトクラブはどこもそんな装飾はしていなかったと思いますね。僕はそういう細かい部分のエンターテインメントを強く推奨していて、やっぱり盛り上がってる風に見えたりとか、エンターテインメントの一部として、見え方も大事なことだと思います。音楽とお酒があって、ちょっとナイトクラブに遊びに来た人にはそれで充分なのかもしれないですが、視覚的にも何かを与えたいなって。それがLEDだったり、色んなパターンがあるとは思いますが、今あるものよりも、もうちょっと、幅が広い視野で考えてみるのもいいなと思ってます。

DJcity : 音楽的な総括を超えて、新しいことに動き始めている感じですね。

DJ Braize : いや、やりたいんですけど、実際は、こういうアイデアって、なかなか受け入れられてない状態です。でも、そこもしっかりやることが出来れば、かなり良いクラブになるっていう自信がありますね。

DJcity : a-lifeの今後の展望を教えて下さい。

DJ Braize : 欧米やアジア圏の人々に、東京のa-lifeをもっと知ってもらうという目標もありますけど、それ以上に日本の中でもっと知ってもらいたいと思います。お客さんが入っている状況ですけど、毎週僕が見ていると、狭いマーケットの中で、決まった人達が遊びに来ている印象もあって。例えば、a-lifeを知っている人が1万人いるとしたら、1万人の中でグルグル回っている。今はこれでいいんですけど、長い目で見ると、後々厳しいことになってくると思うので、単純にもっと沢山の人に知ってもらいたいっていうのがあります。Instagramのフォロワーも少ないですし、それって現状に対する結果だと思うんですよ。フォロワー少ないけど、お客さん入ってるし、いいじゃんっていう声もありますけど、さっきも言った、狭いマーケットの中で、皆さんに来てもらってる状態なんで、もっと広がっていく必要はあると思いますね。ナイトクラブとしてのクオリティを評価されて、今のお客さんに利用してもらっていることは紛れもない事実ですけど、それでも、もっと多くの人に知ってもらうことは重要だと思うので。

DJcity : 確かに多くの人に知れ渡ることは、ポジティブなことだと思いますけど、でも意地悪な意見になっちゃうけど、メジャーになると、それまでのフォロワーを失う可能性もあるっていうのは、どう思いますか?

DJ Braize : 全然それでもいいと思っています。批判はどんな時もあると思うんで。逆に批判を怖がっていると、前には進まないんで。幸いな事に、これまで沢山の人の支持を取り込めたけど、この中から1人も帰したくない。そういう心境は理解しますけど「1人も帰したくない」は難しい話ですよね。醤油ラーメンの味に評価があるラーメン屋で、人気の醤油ラーメンの味を変えないっていうのに似ていて、人気の本質は変えずに、話題になるにつれ、より多くのお客さんに来てもらって、100人中、2人にとって辞められない美味しさなるのであれば、その1/50を溜め込んでいく感覚ですよね。

DJcity : なるほど、次のステージに到達するための犠牲は必要ということですね。実際に日本国内での知名度を確かなものにする施策というのは何か考えていますか?

DJ Braize : 単純にソーシャルネットワークが大切だと思ってます。そこに対するアプローチの方法は色々あって。ゲストDJを呼んだり、外に対して見える部分ですよね。写真1つにもこだわって、より多くの人の目を引くようなことをソーシャルネットワークで展開していかないとダメだと思ってます。僕の周りでも、a-lifeで今どんな音楽がかかっているのかを知らない人だっていますし。良い意味でも悪い意味でも、ソーシャルネットワークに頼りっきりの時代なので、僕らのやっていることを伝えるのにも、画面で見るフライヤーでしか伝えられない。地方もそうですし、海外に対してもそうですし、今のa-lifeで何のジャンルの音楽がかかっているのか、業界の人から一般のお客さんまで、上手く伝わってない部分はあると思うんです。例えば、ラッパーを呼んだらHip Hopがかかる。それだけでわかりますよね?ラッパー呼んでるのにEDMのパーティーってありえないじゃないですか。なので、一発で「このジャンルで、こういうパーティーをやっているな」っていうのが伝わる、どんなゲストを呼ぶかっていうところですね。

DJcity : 確かに私達はa-lifeに行っているんで、どんな音楽で、どんなクラウドなのか理解しているけど、行った事がない人々にとっては、全く想像出来ないですね。

DJ Braize : 初めてニューヨークに行った時が、正にそんな感じでしたね。フライヤーを見ても、どんなパーティーか全くわからなくて。でも、最近はCalvin HarrisがDJとしてクレジットされているフライヤーがあれば、それだけでどんなパーティーかわかるじゃないですか。その情報で「これは遊びに行こう」「逆に、別なクラブに行こう」っていう判断が生まれると思うんで。

DJcity : でも、今言ったような、DJやラッパーというアーティスト主体のイメージ付けをすると、日ごとの特別なジャンルのイベントとしての印象が強く残ってしまうよね?

DJ Braize : それに関しては、ある一定のラインを設けたいと思ってます。「ラッパーも入るし、Diploも入る」っていうような絶妙な感じを作り出せれば、バランスが取れてきますし、バランス感覚の良さがa-lifeのイメージとして看板になってくると思うんです。これもラスベガスに行ったときに感じたんですけど、Hip Hopを聴く人も、EDMを聴く人も、Billboardに入ってくる曲は、どちらも聴いているんですよね。ある程度流行っている曲だったら、誰でも知ってるんですよ。そもそも、至る所でジャンルの話をするのは日本人だけですよね。極論ですけど、僕ら「Mr.ChildrenはRockだよね」とか言ったりしないじゃないですか。そんな話が会話の中で出てこないですし。バランスは重要ですけど、ジャンルのイメージに関しては、僕はあまり気にしないですね。

DJcity : とは言っても、パーティーの設計図と、店舗の売上という、採算っていう部分の調整は付いてまわりますよね。

DJ Braize : そうですね、ナイトクラブ業界の難しいところは、目に見えない部分への投資をどう捉えるかっていう所ですよね。例えば外国人アーティストをブッキングしようとなった時に、必ず言われる一言目は「採算は取れるのか?」っていうところですよね。「200万円の経費をかけてゲストを呼んで、その晩の売上にプラス200万円以上を見込めるのか?」っていう考え方があって、こればっかりは蓋を開けてみないとわからないですし、厳しい面もあると思います。でも、その日の売上に跳ね返ってこなくても、その日、初めてa-lifeを知ったお客さんは普段より多いでしょうし、普段から来ているお客さんも、特別なゲストが来る日のパーティーには友人を誘ったりもするでしょうし、その際にソーシャルメディアが情報共有のツールになりますし。多くの人がソーシャルメディアでa-lifeを話題にすることで、フォロワーも増えて、a-lifeの発信力も強くなっていきますし。すぐ目には見えてこない効果ですけど、長いスパンでは支えになって来るものだと思います。とは言っても、なかなか汲み取ってはもらえない意見ですけどね。

DJcity : それは「業界あるある」ですね。数字とプロモーションという天秤。

DJ Braize : そうなんですけど、でも海外ではこういうビジネスのやり方って、もう既に確立されてるじゃないですか。

関連: 横浜DeNAベイスターズのSound DJをつとめるDJ RAM

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